舞台「夢と希望の先」を見に行ってきた話
根本宗子が脚本・演出を手掛けた「夢と希望の先」の舞台を見に行きました。
感想です。
※一部、作品の内容を含みます。
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行ってきました。
舞台を見るのは小学生に行った「ライオンキング」以来です。あれは完全にミュージカルですし、小学生のときは気取って爆睡していたので、初舞台といっても過言ではありません。
なぜ急に舞台に行くことになったかというと、BiSのメンバーが初日公演を絶賛していたから。ただそれだけです。
ラジオでおぎやはぎが”まどかマギカ”を絶賛していたら、全話見てしまうし、評判がいい映画は全部見に行ってしまうというミーハーの私は、今回もいつものように、「これは行かないとやばいやつだ」と訳の分からない宿命感にとらわれました。
でも見るためにはチケットが必要。ちけっとぴあを見てみると販売終了。当日券販売も、「まだあるんじゃないか」と淡い希望で見てみたたら、すでに完売している事態。手に入らないものってなんか求めたくなっちゃうよね。次の日の木曜日にリベンジを決めました。当日販売券は前日の20時から。予定的に金曜日しかもう空いてなかったので、木曜日の19時50分にアラームをかけ、予約画面に入力するものをメモ帳に書き準備は完了。木曜日になりアラームがなった瞬間、サイトを開き、20時になるまで秒単位でチェックし、パソコンに張り付きました。もうね、必死です。そして、20時になった瞬間、仕事でも見せない速さで文字を入力、コピペをし、購入をクリック。
…購入できました。
翌日、仕事を終え、ダッシュで下北沢へ。んで、当日券を5800円と引き換えに、チケットを受け取りました。
「あれ?一番前じゃね?」
当日券だからクソ席でもいっかと思っていたんですが、まさかの一番前の端っこでした。神席でした。端っこでも全然神席でした。うれしすぎたんですが、一人できたせいで誰にもこの感動を分かち合うことができず残念でした。一人にやにやするのみです。
客層はほんとうにバラバラで、おじさんもいるし、若いおねえさんもいるし、仕事おわりのスーツきたリーマンもいたり…。舞台っていろんな人がくるんですね。
んで舞台が始まって、2時間10分(?)ぶっ続けてみました。
一言でいうと…めっちゃよかったです。
いやー舞台ってこんなに面白いですね。舐めてました。
物語・演出は公式よりもってくるとこんな感じです。
「夢を追い、地方から上京してきた2人の少女の人生が才能の欠片もない1人の男によって大きく左右される話」
「10年前と10年後のシーンが2時間同時進行し続けるという戯曲と演出」
もうちょい詳しくいうと、2人の少女を橋本愛(さっちゃん)とプールイ(えっちゃん)が演じます。
そして舞台は2つに分かれており、10年前と10年後が入れ違いで演出される仕組みになっております。
この舞台の一番の魅力は「人間の抑えていた感情が爆発しちゃうところ」でした。
夢をあきらめたり、挫折をしたときって、自分自身を肯定化させて納得しないとやってられないなって思うんです。「これでよかった」と思い込ませたり、自分の気持ちに嘘をついたり、何かを犠牲にしたり。
でも、「ほんとにこれでよかったの?」って小さなモヤモヤが積み重なって爆発しちゃうときがくる。大事なものを犠牲にして「これでよかった」と思い込んでた選択肢が、アンハッピーな未来を招くなんて誰も予想はしていない。
そんなビターな感情がこの舞台で演出されていて、知らない間に感情移入してしまいました。
さっちゃんとえっちゃんがぶつかるシーンがあるのですが、それがもう本当に逸脱でした。橋本愛って演技うまいな、女優さんってすごいなって思った瞬間でもありましたし、あの迫力で「さっちゃんのどうしようもない心の叫び」が見えるんです。10年前のさっちゃんってすごいいい子で、悪口も言わなければ、常に自分の思いを抑え込んでて…だけど、あのシーンでは爆発しちゃうんです。キレイで収まっていた彼女がこんなに思いを熱くぶつけるなんて…でもそれが切ないんですよ。唯一自分の弱さを見せることができるシーンが、こんな形なんだと思うと切ないんですよ。
自分を守るためにえっちゃんを傷つける言葉を選択するあたり、さっちゃんの悪い部分がどんどんにじみでてきて見てるほうもつらくなっちゃいました。でもすんごい共感もできるんです。自分を守るために、だれかを傷つけないと自分を保てないときってあるよねって。こんな言葉、吐きたくないのに吐いちゃうさっちゃんと、その言葉に傷つきながらもさっちゃんが好きなえっちゃん。号泣しました。求める言葉と、そのとき必要な言葉って違うんですよね…
そして、さっちゃんは彼氏に「好き」っていうんです。その「好き」をいうさっちゃんの気持ちを思うと複雑になります。そして彼氏も「好き」とさっちゃんにいう。でも、言葉は同じでも意味は違う。二人の気持ちの熱量の差に、一見、幸せなシーンも違和感を感じたり…。
この舞台のストーリーって救われないなあって思います。
私は幼いのころ、「人生はハッピーエンドで終わるんだ」って思い込んでいたんですよ。完全、絵本の影響です。でも、大人になるにつれて、そんなことないんだなって実感して、そのどうしようもない報われなさに勝手に絶望したりもしました。そうした描いていたハッピーエンドにおさまらない現実の苦い部分を舞台はうまく表現していました。
ただこの物語のすごいところは、そうした”どうしようもなさ”を演出しながらも、すっげー明るい演出を随所にいれているところなんです。だから、さっきまで号泣していたのに、次の瞬間にはふふって笑っちゃったりしてみたいな現象が起こりまくってました。笑
脇役の人たちがキャラ濃くて、面白いんですよね~。しかも10年の時間軸をうまく利用した笑いがあったりして、うまく作られているんですよ。ふつうに面白くて、笑いました。
あと、プールイ。この人目当てでいったので、ちょっと書きます。
他の役者の演技と比べちゃうと、プールイの演技は可愛いんですよ。
ファンなのに演技がなあ…とか上から目線のことを思っていたんですが
最後の歌にやられました。完全にやられました。
「プールイ…こんなにうまかったんだ」と思ったし、何よりすごい輝いていた。
あの瞬間、プールイがこの役になった理由が分かった気がしました。
ほんとうに涙がとまらなかった。この舞台が私にとって忘れられない舞台になると確信した瞬間でした。
褒めすぎて気持ち悪いですね、笑
そのくらい本当によかったです。
落ちも想像できないくらいぶっ飛んでて最高でした。
こんな終わり方あるのかと、裏切られました。でも、これがいいんだよねって見ていて思いました。終わったあとに、なんともいえない幸福感に満ち溢れましたもの。
いやー舞台はまっちゃいそうです。
当日券もあるので、ぜひパソコンに粘って買うことをお勧めします。
(立ち見とかなら直接会場にも置いてあるのかな?)
ってことで長文の感想でした。
本当に最高でした。この舞台に出会わせてくれたプールイに感謝。
そして根本周子さんの舞台をまた見に行こうと決心するのでした。